
「地上屋」と聞けば、誰もが一瞬固くなってしまうでしょう。そう、「地上屋」とは、不動産業者ですら手を焼くような立ち退き交渉を請け負う仕事です。
税理士になる以前には、不動産業界で営業の仕事に就いていた私には、「地上屋が一体何を語っているのでしょう」 と、とても気にりました。
「なにわ金融道」のようなお話しかと思えば、それともちょっと違っていました。タイトルの通り、 地上屋を生業とする父が、 我が子に自分の経験もとに道徳教育をしようとするものでした。
株と不動産は、投資の双璧です。株や不動産、あるいは金融の仕事をしていると、 否応なしにヒトの欲望と存亡を見てしまいます。
地上屋ともなれば、修羅場とも言える場面にも遭遇しているはずです。
バブルで儲けて頂点を極め、バブル崩壊で全てを失い、そして今「地上屋」となっている一人の男性が、 我が子をいじめに負けない強い子供に育てたいと考え、教えを話し、それをノートに書かせています。
この男性、小川さんはやり手の地上屋です。その筋のものとのお付き合いなし、暴力的な行為なし、 会話交渉のみで地上げを行うそうです。 (まぁ、ちょっと違う風に解釈されることもあるようですが・・・)
その方法は、相手の情報をちゃんと頭にいれ、相手が何を考え、何を望み、 どういう内容なら話を聞いてくれるのかを考え交渉をするのだそうです。
「立ち退き交渉では、水が高いところから低いところに流れるように、人の心理を読むことが重要」とおっしゃっています。
何だか、何処かのセミナーで聞いたようなセリフです。 (^_^;)
子供に対する「金銭に関する教育」は、皆無と行って良いと思います。「証券取引の基礎知識」 のような取り組みを、 証券業界は行っていると聞いたことがありますが、それは金銭の教育とは少し違うと思います。
租税教室を担当したりもしましたが、それも金銭の教育とは言えないでしょう。
私の思う金銭の教育とは、「どういう風にお金を扱うのか」、ということです。どうやってお金を得るのか、 お金を得た後どう使うのか、どう増やすのか、どう守るのか、そういうことだと思っています。
そのことについて、小川さんは「楽して得たカネは体にワルいで〜」(第10話)で話してくれています。
小川さんは、子供に言います。「器量を超えたカネは人生を狂わす。カネは使い方を間違えると凶器になる。 それを忘れたらアカンで。」と。
そして、自らお金で苦労した経験を基に作った戒め「カネ3原則」を教えています。
第1原則「世の中においしい話はない」
第2原則「カネ儲けは人任せにしない」
第3原則「自分で苦労して稼いだカネでないと、簡単になくなってしまう」
的を得ている、良い原則だと思いました。
以前は、「ひたすら働き、ひたすら貯蓄」で良かったのですが、いまは「貯蓄から投資へ・・・」 が奨励されています。
新しい時代を生き抜く子供には、しっかりとした金銭感覚が必要と私も思います。
その他にも、「地上屋」から、「地下屋」に事業内容を変化させて、RCCに返済したことや、 特別特攻隊への思い、世の中の理不尽なことなどなど、仕事上直面したいろいろなことが書かれています。 きれい事ではない世の中のことを、小川さんは小川さんの言葉で子供に語っています。
こういうきれい事でないことは、学校では教えて貰えません。ゲームばかりをして、 他人との接触も少ない最近の子供達ですから、尚更そういう社会のことは、親でないと教えることが出来ないと思います。
地上屋という究極の「交渉人」が、理不尽だらけの世の中で、いかに強く逞しく生きるべきかを、 いろいろなテーマで子供達に話してくれています。ちょっと刺激が強すぎるかもしれません。
けれど、小川さんお話しは、現実の社会に本当にある事です。
これこそ「親子の会話」と言うのであって、ただただ子供と遊べば良いのではない、と私は思います。皆様は如何思われますでしょうか。
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平野由紀子税理士事務所